2 ちゃんねるはなぜ潰れないのか ?

2 ちゃんねるはなぜ潰れないのか? &


erogeek で有名なゆーすけべー氏の書評 ( http://yusukebe.com/archives/08/04/02/103648.html ) で興味が出て読んだ形。

まず読みにくい。ひろゆき氏がしゃべったことを編集の方が文章に起こしているようなので細かいニュアンスがわからなかったり編集者視点の文章が挿入されていたりと勘弁してほしいところもちょっとある。あとアルファベットが 2 バイト文字なのは文庫形式だからなのかな。これも読みにくい原因だと思う。

内容に関して、タイトルにもある 2 ちゃんねる云々に関してはこれこれこういうわけだよと説明するわけではなく、複合状況の一つ一つをつらつらと語る形。関連問題まで含めて前提として扱っていることから既に過去であるという視点も入っているようにも見える。複合状況については現在のインターネットと社会の関係について語っているのがほとんどで、社会的 / インターネット上の事件についての大雑把な説明と氏による解釈での説明を加えるというスタイル。

ここで注意すべきなのは氏がどういうひとなのかということなんだけど、俺は氏に関して 2 ちゃんねるの管理人であるということとニワンゴの取締役であることくらいしか知らない。ニコニコ動画は最近使ってはいるけど 2 ちゃんは検索に引っかかったときに覗くくらいで書き込んだことすらないのよね。だから俺はまず氏がどういう人なのか推測しなきゃいけないんだけど、とりあえずこの本から感じられる氏の人となりについて書く。

この本を読んで非常に強く感じる印象は氏が非常にバランスを取るのが上手い楽観的現実主義者ということ。自分が面白いと思うことやりたいと思うことへの情熱を燃やすことと目標への現実的な到達を徹底することへ余念がない。常に周りの状況、メリット / デメリット、あらゆる ( 個人的・社会的・物的・時間的・金銭的・地理的・法的 ) コストを気にかける。コスト的に見合わないとわかるとすぐにそれについての思考をとめる。意味がないと判断したことに関しては早い段階で切り捨てる。

氏が切り捨てている例の代表として Web 2.0 という言葉が挙がっているけど、最近になってそれを提唱者である Tim O'reilly 氏にそのままぶつけていたりしている ( http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20361105,00.htm ) 。余談だけどこの記事では Tim 氏もそれに関しては同意しているんだけど Web 2.0 という言葉にこめた本来の意味についてちょっと触れていたりする。言葉というのは一人歩きしやすいというか原義を知らずに使う人間やあえて曲解して使う人間が多いってことだぁね。

で、そういった氏の人となりを考慮するとこの本で書かれていることは非常に現実的で色々なことに対して否定的なイメージがつきまとうんだけど、氏が否定的なことというのがいろいろな条件付であることも忘れてはいけないと思う。技術は進歩によって前提までガラっと変えてしまうのが常だし真理となる知識は時間を経て人類に共有される。そういった条件のクリアには時間がかかりすぎるのはわかるけど、氏ほど性急に全てを見極めなくてもいいという視点もある。

一つ考えさせられたのがメディアとヒエラルキーについて。偉い人が言ったことは正しいという認識とそこからくる強制力は確かにあって常に疑ってかからなきゃならない世の中なんだけど、 2 ちゃんねるでは全ての情報がフラットで正しいものは自分が正しいと判断したものだという話が出てて非常に興味深い。情報規制や検閲などの話しにも繋がっていくけども、これって情報処理能力の格差にも問題があったりするのよね。自分で pull ・ judge できる人は情報の海に対して単身素潜りでもいいんだけど初心者はインストラクターについてもらわなきゃ命の危険があるし下手な人は一生下手だったり先天的な要素も絡んじゃったりする。で、そういう人に対して適切に情報を集約できる人が必要だけど、情報集約自体に騙される可能性があるという矛盾が包含されている、と。だからこそ 2 ちゃんの存在がときにはブレイクスルーに繋がったりするし逆にヒエラルキーを構築しかねないコテハンが嫌がられたりするのかなと。

そして小飼弾氏との対談。ここが一番面白いと思う。小飼氏は凄腕のインタビュアーな感じ。話をリードしつつ引き出しつつ脱線を強要しつつ強要されても柔軟に対応する。ひろゆき氏と小飼氏の会話のリズムを楽しむ。たまにずれたりするけど。それとこの会話って生で聞いても多分ほとんど理解できないだろうけどこうやって文章にしてもらえるといくらでも咀嚼できるのはありがたいなぁとか。

あとは本全体にわたって現在のインターネットを知る上でのキーワードがいっぱい載っているのでそれらを知ることができるのがよいかな。まぁキーワードについての説明・言及は本当にさらっとしかないので自分で調べることが前提なんだけど ¥740 で方向性だけでも教えてもらえるなら安いかなと思う。